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多目的コホート研究(JPHC Study)

浴槽入浴頻度と乳がん罹患との関連

―多目的コホート研究(JPHC研究)からの成果報告― 

 私たちは、いろいろな生活習慣と、がん・脳卒中・虚血性心疾患などの病気との関係を明らかにし、日本人の生活習慣病予防や健康寿命の延伸に役立てるための研究を行っています。平成2年(1990年)に岩手県二戸、秋田県横手、長野県佐久にお住まいだった、40~59歳の女性のうち、乳がんの既往がなく、調査アンケートに回答した15,927人の方々を約23年間追跡した調査にもとづいて、浴槽入浴頻度と乳がん罹患リスクとの関連を調べた結果を論文発表しましたので紹介します(Asian Pac J Cancer Prev. 2025年5月公開)。

 我が国の乳がん罹患率は、欧米と比較して低く、その理由として、肥満の割合が少ないことや大豆製品を多く摂取することなどの生活習慣の関与が指摘されています。

 浴槽入浴の習慣は日本特有の習慣で、入浴をすることは、体重減少や睡眠時間の改善などを介して、乳がんのリスク低下と関係している可能性があります。先行研究では、浴槽入浴と循環器疾患リスクや認知症リスクの低下との関連についての報告はありますが、これまで浴槽入浴と乳がん罹患との関連を調べた前向きコホート研究はありませんでした。

 そこで、私たちは、多目的コホート研究において、浴槽入浴頻度と乳がん罹患との関連を明らかにすることを目的としました。

 

浴槽入浴と乳がん罹患とは関連なし 

 研究開始時のアンケート調査の中で、浴槽入浴頻度に関する質問項目の回答から、対象者を「ほとんど毎日」、「週に3-4日」、「週2日以下」の3つのグループに分け、その後の乳がん罹患との関連を調べました。約23年間の追跡期間中に370人で乳がん罹患が確認されました。浴槽入浴が「ほとんど毎日」のグループを基準とし、それ以外のグループの乳がんリスクを比較したところ、浴槽入浴と乳がん罹患との間に統計学的有意な関連はみられませんでした。また、入浴の温度(ぬるい、ふつう、あつめ)でみても、関連は見られませんでした(図1)。これらの結果について、乳がんを、閉経前乳がん、閉経後乳がんに分類したところ、いずれも関連はみられませんでした(図なし)。  

 

(クリックして拡大)

図1.浴槽入浴の頻度と温度と乳がんとの関連
地域、年齢、飲酒、喫煙、余暇の運動、乳がん家族歴、初経年齢、初産年齢、出産人数、閉経状況、閉経年齢、女性ホルモン剤使用歴を調整

 

この研究について

 本研究は、浴槽入浴頻度と乳がん罹患リスク低下との関連を調べた、世界で初めての前向きコホート研究からの報告です。
浴槽入浴による乳がん罹患への予防的な効果を期待しましたが、乳がんリスクと関連する体格(Body Mass Index, BMI)の影響を調整しても、今回の研究では、入浴と乳がん罹患との関連は見られませんでした。乳癌治療の一つに、腫瘍を電磁波で体外から加温する温熱療法がありますが、先行研究である、浴槽入浴と乳がんに関する症例対照研究でも関連がないことが報告されており、今回の研究においても浴槽入浴の温度との関連は見られませんでした。

 今回の研究では、浴槽入浴についての情報は自己申告であること、また研究開始時に一度だけ得られた情報しかなかったために、追跡期間中の変化などは考慮されていないことなどが研究の限界と言えます。

 

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